Tさま邸の特徴
「長持ちする家」を希望していたTさま。完成したマイホームは、高耐久・高断熱な北方型住宅ECO仕様に加え、傾斜した土地を活用したビルトインガレージや、中2階収納庫のある納得のデザインに仕上がりました。タッグを組んだ建築家の小尾さんと、拓友建設社長の妻沼は「建て主さんの要望に真摯に応える中でいい家が生まれる」と振り返ります。
設計/小尾建築事務所
性能を満たした上で理想を形に
「50年後も快適に住める家なら、転勤しても一時的に人に貸し、その後自分の子どもが暮らせる。無駄にならないと思った」と家づくりを決意したTさん。そのため、マイホームに求めるのは一にも二にも長持ちすることでした。一方で「冷え性で靴下が手放せない」という奥様は暖かさを重視。
高い耐久性と断熱・気密性能を確保した上で、高低差のある敷地を生かしながら、自分の希望をどう実現していくかがTさんの家づくりのテーマでした。
傾斜地を生かした提案が決め手
当初はハウスメーカー数社に声をかけました。でも南側になる敷地の奥に家を建て、その前に車庫を作るプランばかり。これでは日当たりのよい庭をあきらめなくてはなりません。スペース配分に工夫が欲しくて不満だったそう。
そこで奥様のご友人の旦那さまで、以前からプライベートでお付き合いがあった小尾慎さん(小尾建築事務所)に設計をお願いし、施工会社を探すことになりました。
Tさま「車庫を組み込み式にして建物を道路側に配置。裏手を庭として使う今の形を最初から提案してくれました。車庫と2階・個室の間に中2階の収納庫を作るのも、敷地の高低差をうまく利用したプランだと思います」。
奥様も「車庫から食品庫を通ってキッチンに入れるから買い物がとても楽」。建物を道路側に寄せたのは除雪の手間を軽減するためでもあります。
施工会社を拓友建設に決めたのは「技術力に定評のある工務店さん」という小尾さんの紹介があったから。「拓友建設の妻沼さんは、意匠性と性能を備えた質の高い住宅づくりに共に取り組んできた信頼出来るパートナーの1人です」と小尾さん。
今回北方型住宅ECOを採用したのは、国から補助金が出ることもありましたが、妻沼社長や小尾さんに耐久性と経済性、耐震性といった住宅の性能面で最先端であることを説得されたからです。
窓からの日差しを楽しむ
吹き抜けのあるリビングダイニングはTさんのこだわりが散りばめられた場所。特徴的なのが窓のレイアウトです。
開口部はコーナーでL字型に付き合わせた天井付近の窓と高さを抑えたテラスの2ヵ所。1ヵ所に丈高の大開口部を作ると、隣家の視線が気になるため、このような配置になったそうです。
2方向から広がる光が複雑に反射して昼間のリビングがより表情豊かに。壁一面の大きな窓から燦々と降り注ぐ日差しとは違った趣があります。
妻沼「高い耐震性を確保しながら、この吹き抜けを作るのは設計上大変でした」。
テラスの向こうは庭。生け垣の手前にある柿の木は、この敷地にもともと植えられていましたが、小尾さんの提案で今の場所に移し替えました。
小尾さん「長い時間をかけて熟成されてきた街の風景や樹木を住宅建築に取り入れて受け継ぐことで、敷地を含めた住まいの資産価値が変わってくるのでは」。
奥さまの要望でキッチン横に実現した、お子さんの勉強スペース。家事コーナーにもなります。
シンプルだけど退屈じゃない家
T邸は吹き抜けの通路や階段の手すりなどを目隠しとして巧みに使っています。そのため、間取り自体はシンプルなのに「向こうに何があるんだろう」と思わせる楽しさがあります。
2階の書斎コーナーや洗面室のあるゾーンはクロス貼りの手すりに隠れて1階からは見えません。
一方、吹き抜けに面した子供のためのオープンスペースは太陽光や視線を遮らない格子状の手すりを使用。1階にいる人との距離が遠くならないように、通路部分の床を低くしてスキップフロアにしています。
新しい家は「とにかく暖かい」とTさん。特に車庫の上に作った中2階の収納スペースが昼寝には最高だそうです。
「今思うと結構、注文があったんですね」と振り返るTさま。妻沼と小尾さんは、何度も「建て主さんの要望に真摯に応える中でいい家が生まれる」と話します。