ビル建築のプロがこだわるナチュラルな家 恵庭市Mさま

Mさま邸の特徴

恵庭市Mさまのお宅は、ダークグレーのシャープな印象の外観に、吹抜けの階段ホールから光を採り込むLDKを中心にした明るい内観。ご夫婦ともにビル建築の設計に携わるMさまならではの視点から生まれた希望を、住宅設計のプロと拓友建設が組んで形にした住まいです。光や視界を通すさらし階段をポイントにしたオープンなLDKを中心に、家族が互いの気配を感じられ、目が届く安心感に満ちています。

設計/メグロ・アーキ・スタジオ

シャープなフォルムが際立つ外観

シャープなフォルムが往来から目を引くMさま邸。外壁はダークグレーのガルバリウム鋼板を横葺きにし、直線を強調したデザインです。「窓枠の縁と鋼板のエッジラインを揃えるには、高い技術が必要でした。拓友建設さんは、それにしっかりと応えてくれました」とMさま。

陽差しを取り込むため大きくすることが多い南側の窓は、M邸ではどちらかといえば控えめ。室内の熱溜まりを避けるためですが、内部は十分な明るさを確保しています。

カーポートから枕木のアプローチを通る見えてくるのが、どっしりと厚みのある玄関ドアです。

玄関ドアを開けると、吹き抜けスペースが出現します。日中は、吹き抜けの上まである細長い窓からやわらかな光がふんだんに入るので、照明はまったく不要。框(かまち)を上がって室内へ足を踏み入れると、「裸足で暮らしたい」と奥様が切望された無垢材のフローリングから、温もりがじんわりと伝って気分が和みます。

玄関から真っ直ぐ動線上にある階段の、木(もく)を組み合わせた造形美は、思わず目を奪われるほど。設計したメグロ・アーキ・スタジオの目黒泰道さんは、「階段はもっとも時間をかけて検討を重ねた部分のひとつです」と話します。

※写真はMさんご家族

約4ヶ月を要したプランニングの過程で「位置を何度も変更して、その都度形も変わりました」とMさま。目黒さんが提案したいくつもの案から、ベストなものをチョイス。決め手はお子さまが2階に行く前に、必ずリビングを通る位置でした。

専門家同士が連携して希望を実現

室内は全体を通してナチュラルな雰囲気。東向きの大きな窓からの陽差しが優しいリビングは、ゆったり感に包まれます。

「実は、目黒さんとは学生時代からの友人なんです」。Mさまご夫妻は目黒さんと同じ大学で建築を学び、ともに設計の仕事に携わる専門家です。2012年春頃の土地購入をきっかけに、念願だった自宅の自主設計に踏み切りますが、ご夫妻の専門はビルなどの大きな建物で、住宅は未経験でした。

そこで、Mさまは日頃からその実力を認める目黒さんに援軍を依頼し、2012年12月から本格的な作業が始まりました。その後、これまでに多数の北方型住宅を建設してきた拓友建設がチームに加わりました。北海道SHS会の会長を務め、高品質住宅への思いを強くする妻沼は、信頼する設計事務所に設計は一任し、自らは施工に専念する考えの持ち主です。その一方で、独りよがりな設計は許さないという気骨も持ち合わせています。「お施主さんが建築のプロであっても、当社は普段通り淡々と高品質の家づくりをするだけでした」。

プロだから共有できるこだわり

Mさまが最初からこだわったのは、リビングに連なる小上がり風の和室を設けることでした。将来仏壇を置くことを前提としながら、”和”に偏り過ぎることなくスッキリとまとめたところがポイントです。加えて、リビング側に敷居框(しきいかまち)が張り出しています。それは、腰をおろした際にかかとが当たらないようにしたものです。200mmという高低差にも意味があり、リビングとの一体感と和室の存在感を両立させる「ちょうどよい高さ」なのだと目黒さんは説明します。

妻沼「この幅木の”散り”(壁からの出幅)も、目黒さんを介してかなりやりとりしましたね」。そして「通常は10mmぐらいですが、薄いほどスマートに見える。でも、きれいに仕上げるには熟練の職人ワザが必要です。Mさんが指定された4mmは、言わば専門家ならではのこだわり。それに応えることも、ウチに期待されたことでしたね」と振り返ります。「たとえ自己満足と思われてもいいんですよ」と目を細める目黒さん。その言葉に、Mさん夫妻も大きく頷いていました。

家族の様子が見渡せるキッチン

ユーティリティー関係では、造作した洗面台が印象的。幅をたっぷりとる一方で、高さはいくぶん抑え目。お子さまの踏み台を外す日も、そう遠くない未来のことでしょう。

キッチンからの眺め

キッチンは、寸法・幅なども含めて奥様が詳細に設計しました。体のサイズに合わせた使い勝手重視の造りで、「1階全体を見渡せることも、希望通りです」。実際に立ってみると、奥の和室までがきっちりと視界に収まります。炊事をこなしながら、家族の気配を常に感じていたいという奥さまの気遣いが伝わります。

2階の共用スペースは玄関と吹き抜けで通じており、家族の出入りもよく分かります。階段を上がりきった左手のスペースに、窓を掃除するためのキャットウォークがあります。この形状は冷暖房の効きを考慮したもの。カウンターテーブルは十分なスペースを確保して、お子さまの勉強机に変わることも想定しています。お子さまはずっと裸足のまま、元気に駆け回っています。M邸で営まれる日々の暮らしがいかに快適なものか。それをカワイイ素足が物語ってくれました。