熱帯魚が泳ぐアクアリウムを楽しむ家 岩見沢市Fさま

設計/N建築設計室 野際礼子さん

Fさま邸の特徴

Fさま邸は、夏と冬の太陽高度の違いをふまえた日射と遮りのバランス、斜めスペースを無駄にしない工夫など、デザイン性と機能性を兼ね備えた設計が特徴の住まいです。Fさまの趣味であるアクアリウムは、リビングの壁と一体化させました。落ち着いたトーンの壁に浮かび上がるアクアリウムの中で熱帯魚が泳ぐ様子は、まるでアート作品のような見ごたえがあります。

※F邸はiezoom(いえズーム)に掲載されました。許可を得て転載いたします。

住宅を訪ねて最初に目を奪われるのは、熱帯魚が泳ぐアクアリウム。ご主人の趣味をリビングの主役に据えた大胆な間取りがどのように生まれたのかお聞きしました。

職場の設計はN建築設計室。それが新築依頼のきっかけ

屋根の雪下ろしや道路側の雪庇落としを考慮し、2階の窓から1階の屋根に出て2階の屋根に登れる造りにしている

ご主人 息子が小学校に上がるので、子ども部屋が欲しいと思い新築を決めました。ハウスメーカーを回ってたくさん話を聞いたものの、良い話を聞くだけでは最終的に自分で判断できないと思うようになって。それならば「人」で決めようと考え、職場や知り合いの住宅を手がけ10年来の知り合いだったN建築設計室の野際さんにお願いしたんです。

お客様のご要望や好みにより設計士をマッチングして家づくりを行う拓友建設ですが、今回は設計士の野際さんから拓友建設の妻沼社長に施工をお願いする形でのコラボになりました。これまでもタッグを組んで、魅力的な家をつくってきた間柄です。それでは、新居を1階から見せていただきましょう。

玄関先のルーバーとベンチは、家の土台に使う材料を活用。宅配BOXのほか、鍵を開ける際のちょっとした荷物置きとして重宝しているそう。

正面の扉は奥行きのあるクロークなので、玄関はすっきり!

1階は玄関からリビングへの動線上に洗面所とお手洗い、リビングに隣接してご主人の趣味部屋があります(柱の左手ドア)。

キッチン奥には家事室を設けました。冷蔵庫に貼りがちな学校関係の書類などもここに整理しています。

「家事室のロールスクリーンを下げれば、ひとり時間に没頭できます」と奥さま。

変形リビングは、斜めに振った南面に大きなテラス窓を配しました。

少し奥まった小上がりはリラックス空間。

アクアリウムを「見せる」設計。ご主人念願の趣味部屋をリビング横に

F邸を訪れた誰もが驚くのは、LDKの壁に一体化ししている幅120cm大のアクアリウムです。落ち着いたトーンの壁に浮かび上がる水槽は、生活空間に取り込まれたアートのようです。

妻沼社長 水が入った状態を初めて見ましたが、とても美しいですね!

水槽の裏は、熱帯植物やカメを飼育するご主人の趣味部屋です。

ご主人 以前住んでいたアパートでは、1室を趣味部屋にしていました。でも、湿度が高くてパソコンが壊れたり、服に水が飛んでしまうため、野際さんに「趣味専用の部屋とリビングで鑑賞できる大型水槽」をお願いしました。

趣味部屋には飼育専用のシンクもあります。

野際さん お話を伺った当初はアクアリウムのことを詳しく知らず、「水槽が置ければよいのかな?」と思っていました。よくよくお話を伺うと、正面を見ながら水槽の中をつくり込んでいくのだとか。水槽が美しく切り取られるよう意識しながら、作業時は壁の上部を取り外せる造りにしました。

2階にまとめた浴室やユーティリティーが生活動線を快適に

2階には、主寝室と子ども部屋、バスルームやユーティリティー、お手洗いがあります。

趣味部屋を1階にしたことで、お風呂やユーティリティーなどの水回りが2階にまとまっているF邸。「住み始めてから、この動線の快適さに気づいた」とご夫婦は口を揃えます。

ご主人 起床してから仕事に出かけるまでの準備が、すべて2階で完了するのがありがたいですね。

奥さま 脱いだ服を洗濯して乾燥させ、主寝室のクローゼットに収納するまで、動線に無駄がありません。

寝室のWICは変形ですが、絶妙な角度とパイプ収納のおかげでデッドスペースがありません。

2階に関するご夫婦の希望は、「風通しのよさ」でした。子ども部屋の窓と階段の窓を対にするなど、フロア全体で風の道が考えられています。扉を開け放てるよう引き戸を採用し、各部屋のクローゼットに扉は付けませんでした。

設計士にお願いすると高い?満足度の高さが、そんなイメージを払拭

左手前にご夫婦。奥のテーブルセット左手に野際さん、右手に妻沼社長

ご主人 設計士さんにお願いすると価格が高いイメージがあったので、ハウスメーカーと比較もしました。家が完成した今、満足度まで含めて考えたら正直安く済んだと感じます。

妻沼社長 実はどの会社に依頼しても、設計は必要な工程ですから設計担当者はいるものです。プロが手がける設計にはきちんと意味があり、私たちは施工会社としてそれを望んでいますから、これまで設計士とタッグを組んで家づくりをしてきました。

例えば、夏と冬の太陽高度の違いをふまえた日射と遮り(さえぎり)のバランスが絶妙な屋根のひさし。施工上も難しいからこそ、無駄にしてほしくない斜めスペースの活用法など、野際さんの設計にはデザイン性と機能性に理由があります。部屋にたくさん窓を付ければ風通しがよくなるわけではないんです。

野際さん 最初に「どのくらい予算をかけられますか?」とお聞きしています。将来、楽しく暮らしていただくためには、若干余裕を残した予算内で収めたいから。そのために案を精査しながら、一生懸命設計させていただきます。

【記者の目】

ペットのリクガメは室内で放し飼い。F邸は生き物がいっぱいです。

「家を建てることが目的ではなく、完成した家で楽しく暮らしていただくことが我々の願いです」という、妻沼社長と野際さんの言葉が印象に残った今回の取材。仲良し3人家族とたくさんの生き物が暮らすF邸は、その思いを体現しているようでした。