Sさま邸の特徴
デザイナーズ感漂うメタリックな外観がひと際目を引くSさま邸は、「第2回北方型住宅賞 優秀賞」を受賞した高性能住宅。建坪61坪という広さで、月額の暖房費が7000円というのがその証です。換気は排気に含まれる暖房熱だけを回収して室内に戻す「第1種熱交換換気」を採用。暖房は地中熱ヒートポンプを採用し、1度得た熱は外に逃がさないという省エネシステムができあがりました。
設計/メグロ・アーキ・スタジオ
札幌市北区郊外の住宅街に建てられたS邸。ご夫婦とお子さん3人が広いわが家でのびのび暮らして暖房代はたったの7,000円。「第2回北方型住宅賞 優秀賞」を受賞したデザインと性能のすごさを取材しました。
拓友建設が建築家とコラボする理由
お子さんが大きくなったので個室をと、新築を検討しはじめたSさま。住宅展示場やモデルハウスをめぐりましたが、4人家族向けになっているところが多く、5人家族はオプション扱いで、希望のプランを検討すると金額が大きく跳ね上がってしまいました。
また、家族がいつも集えるリビングを充実させたい、家事のしやすさを考えキッチンや洗濯室を広くしたいなど譲れない希望がいくつかありましたが、「対応できない」と言われることも多かったと言います。
最後に見たのが、拓友建設とメグロ・アーキ・スタジオがコラボしたモデルハウスでした。
木をふんだんに使った内装が気に入り、設計者の目黒泰道さんが質問に的確に答えてくれたこと、また真の自由設計ができると言われたことがご夫婦の心を動かし、「ここにしよう!」とスムーズに決まりました。
目黒さんはSさまの希望に対し、「絶対にできない」とは言わず、無理なことは別の方法を提案しました。また、今だけでなく年齢を重ねてからも使いやすい動線を考えた設計、光の取り入れ方、予算を抑えられる素材選びなど、積極的に提案してくれたそうです。
「オーナーさんの要望に対し、一歩進んだ形で応え、意味のあるプランを提案できることが、建築家に設計してもらう最大の良さ」と拓友建設代表の妻沼も話します。
さらに完成してからも、何か気になることがあれば「妻沼社長も目黒さんも、連絡したらすぐに飛んできてくれます」と、アフターサービスにも満足されている様子です。
行き止まりがなく自由に行き来できる家
さっそく奥様と、設計者の目黒泰道さん、拓友建設の妻沼社長にお家の中を案内してもらいました。1階は、行き止まりがない回遊式で、どこへ行くにもスムーズです。キッチンを中心に、ダイニング、リビング、小上がりの和室と仕切りがなくつながっており、余分な柱もなく広々とした空間です。
そのスペース全体が見渡せるアイランドキッチンはすべて造作しました。既製品に比べると間口が広く、作業スペースも広めにとっています。
また来客があってもキッチンの手元が見えにくいようカウンターを少し高めにし、その分を収納に利用するなどムダのない設計。お子さんも進んでお手伝いをするようになったそう。見せる部分と見せない部分を分けてメリハリ良く、やかんや鍋の大きさまで計って作った完全Sさんオリジナル仕様です。
リビングの奥の和室は、軽く腰掛けられる高さの小上がりになっています。これは、Sさまご夫婦が拓友建設のモデルハウス「HAKUA(ハクア)」を見てほれ込み、そのまま採用したもの。
「腰掛けながら上がれるので、親も座りやすいと喜んでいます」と奥様。ご主人はこの和室が大のお気に入りで、休日はゆっくりと壁際の机に向かってパソコンを使ったり、昼寝をして過ごすとか。
外側から見えるところには、南面でも大きな窓はつけずに外部からの視線を避け、隣の住宅と面した東側は、キッチンの上部を吹き抜けにして2階からうまく光を取り入れています。
目黒さん「奥様は当初、『上から見下ろすのが怖いので、吹き抜けは嫌』とおっしゃいましたが、2階の居住スペースから見えないようドアで区切る提案をしたら、『これならOK』と納得してくれました」。
2階の中央は共有のホールスペース。一方、各自の寝室は小さくシンプルです。「子どもが部屋にこもらないでリビングに来たくなるようにしてもらいました」と奥様。
家じゅう暖かくて快適なのに、暖房代月7,000円!
長い目で見てお得な暖房設備にしたいと検討した結果、地中の熱を利用する「地中熱ヒートポンプ」を採用しました。地中熱は冬でも夏でもほぼ一定した温度のため、冬は暖房に、夏は冷房に使えます。地下からの湧き水が冬暖かく感じ、夏冷たくて気持ちいいのと同じ原理です。
換気は排気に含まれる暖房熱だけを回収して室内に戻す「第1種熱交換換気」を採用。暖房の熱は地中からもらい、1度もらった熱は外に逃がさないという省エネシステムができあがりました。
1階はすべて床暖房で、ほんのりとした暖かさ。拓友建設はもともと道が推奨する「北方型住宅基準」よりずっと上の断熱性能を持った住宅を建てているため、床の温度を熱くする必要がありません。
足が冷えない程度の温もりがあれば、室内を快適に維持できるのです。「家の中のどこにいても快適です。玄関も暖かく、靴が乾くのが早い」と喜ぶ奥様。
省エネといってもSさま邸は通常の2軒分に近い61坪の広さがあります。それなりに暖房用の電気代もかかりそうですが、「月7,000円ですよ」という驚きの答え。一ケタ違う安さです。
なお、この住宅は、優れたデザインと徹底した省エネ・耐久性に配慮した住まいを実現する施工力が評価され、次世代に受け継がれる価値のある良質で新しい北方型住宅に与えられる「第2回北方型住宅賞」 優秀賞を受賞しています。