景色と光を採り込む快適な住まい 江別市・Nさま

Nさま邸の特徴

Nさま邸は青いドーマー窓が付いた三角屋根に、2階リビングを目隠しする木製ルーバーがポイントの外観。換気には、温度差を利用した空気の流れで室内換気を行うパッシブ換気システムを採用しました。周りの住宅をかわしながら、街路樹などが見えるように窓を配置してあり、ダイニングには愛犬専用の小窓も付いています。

設計/メグロ・アーキ・スタジオ

借りていた家が更新打ち切りに

「いずれは自分の家を持ちたかった」と話すNさまご夫妻は、高校教員を定年退職して今は学校講師のご主人、版画などの趣味を持ちながらパート勤めをしている奥さま、受験生の息子さん2人との4人暮らし。それまでは借家に住んでいましたが、家主さんから昨年春に更新を断られ、1年以内に家を出るようタイムリミットを突き付けられてしまいました。

住んでいたこのエリアをとても気に入っていたというNさま。「家をそのまま買ってくれてもいい」と家主さんからの提案もあったのですが「値段が折り合わなかったし、もともと家の結露もひどくて困っていたんです」(奥さま)ということもあり、前から考えを温めていた一戸建てを新築することにしました。

南向きを意識して道路からやや斜めに建てられている。玄関ドア上に張り出した窓2つの小さな方は愛犬・オスカルくん用

期限は1年間。でも妥協はしたくない

幸いにも近くに土地が見つかりましたが、何よりも大事なのは住宅会社選びです。「私たちは木を使った家が好きなんです。そこで、ネットで検索してみました」と奥さま。

普段から住宅雑誌を読むのが好きで、いろいろと研究していたそう。ハウスメーカーの住宅展示場は回らなかったのですか?と尋ねてみると「本当にこちらの要望を受け止めて建ててもらうなら、大手会社は対象外でしょう」とご主人。

ネット検索から木をふんだんに使った設計事務所のメグロ・アーキ・スタジオさんのホームページにたどり着いたご夫妻。さっそく電話をして、まずは売り出されていた区画の土地選びをアドバイスしてもらったそう。

メグロ・アーキ・スタジオの目黒文佳さんが話します。「ここは第2種中高層住居地域に指定されており、隣にアパートが建つ可能性もあります。南側の日差しが遮られない方をお勧めしました」。

好感を持ったご夫妻は、6月に目黒泰道さん・文佳さんの自宅を見学に行き、木をふんだんに使ったその造りに「お願いしよう」と思いが固まったそうです。

住宅の施工にはメグロ・アーキ・スタジオと、これまで何度も一緒に仕事をしている拓友建設を指名していただきました。
「設計事務所とのコラボレーションでそれぞれが得意とするところを生かし、オーナーさんのために高い品質と理想を叶える家を造る」という社長の妻沼のポリシーにNさまご夫妻が共感したことと、北方型ECO住宅を推進し、高断熱・高気密を基本とした拓友建設さんの性能の高い家づくりと実績に対する安心感もありました。

それからは週1~隔週1回のペースで打ち合わせ重ねながらプランを固め、雪のちらつく頃に着工、3月に念願の新居完成となりました。

階段のわきにはご主人用の本棚と壁厚を利用した飾り棚(ニッチ)がつくられている
1階から2階へは開放的なオープン階段を採用。幅広で段差も低いため「洗濯物を持っても上り下りしやすい」と奥さま

光と景色を採り込んだ、どこにいてもくつろげる家

広々とした敷地の中、少し斜めになった形で建っているNさま邸。
「ご主人の希望で家を南向きにしました」と目黒文佳さん。

屋根から突き出したドーマーウインドウの後ろには、温度差を利用した空気の流れで室内換気を行うパッシブ換気システムの排気筒が見えます。これは、なるべく自然のものを取り入れたいというNさまご夫妻の希望によるもの。

多用途に使えるロフトスペース。赤みを帯びたカラマツ材に対して階段などには白いシナ材が効果的に配されている
窓際のテーブルで談笑するNさまご夫妻。オスカルくんも自分専用の窓から道路を眺めるのが何よりもお気に入りとか

部屋の壁は卵の殻を使ったしっくいのような質感を持つエッグウォール、構造材には味のある道産カラマツ材がメインで使われており、ドアや階段室などにはプレーンですっきりしたシナ合板が配されています。

廊下や階段幅もかなり広々としているので、ここでは「通路」といった言葉は似合わないよう。例えば、廊下や階段にペタンと腰を下ろして本を読んだとしても違和感はなさそうです。
「デッドスペースみたいな部分をつくりたくなかったんですね。ですから、通路も活用できる家として設計しました」と文佳さん。

奥さまも「実は、ここに座るのが落ち着くんですよ」と指したのは、斜め天井を利用したロフトに上る階段の1段目。表面にはコルクが敷いてあって、確かにヒョイと座りたくなる感じです。うーん、どこでも腰を下ろせる家ってうらやましいなあ。ちなみに、階段の側面は収納スペースとして有効活用されています。

リビングのある2階は、ほぼひと続きの開放的なスペースになっていました。自然の光が明るく差し込み、窓からは木々などの緑が見えます。まるで外の景色と室内の空間がひと続きになったよう。バルコニーにいる感覚といったらいいのでしょうか。「窓は多めにあるんですか?」と聞いたところ「いえ、標準的ですよ」と文佳さん。

「周りの住宅をかわしながら、街路樹などが見えるように窓を配置してあるんです」。確かに周囲には住宅もあるのに、細長の窓があまり使われていないのもメグロ・アーキ・スタジオさんの綿密な計算によるもの。親類が遊びに来たときは「レースのカーテンを引かなくても住める家だね」と感心していたとか。

2階リビングからは大きな窓で開放的な眺め。外からはバルコニーが目隠しになってプライバシーが保たれている

愛犬・オスカルくんの専用窓

さらに、窓の配置は光も効果的に取り入れるように計算されています。「台所や、朝食を食べるテーブルには朝日が差し込むようになっているんですよ」とご主人。

テーブルの下にも窓がありますね?「ああ、オスカルの窓です」。この道路がよく見えるテーブルの下にもオスカルくん専用の窓があります。

「オスカルは、道を行き交う人たちを眺めるのが好きなんですよ。妻が外出したら寂しくてこの窓からのぞいていて、帰ってくる姿が見えるとうれしくてほえるんですよね」

階段を下りた玄関には、風合いのあるレンガが敷き詰められていました。「江別のレンガです。名産地でもありますし、やはり地元のものを使いたいと思いました」(ご主人)。玄関から広い廊下の続く先には広い庭に出られるガラス戸があり、その部分もレンガの床になっていました。

ご主人「私の母の実家ではリンゴ園をやっていたので、うちも庭にリンゴの苗木を植えたんです。あと何年で実が付くか楽しみですね」。オスカルくんと共に余裕あるくつろぎの暮らしぶりがうかがえました。