小さな建坪で広い庭を楽しむ家 札幌市Nさま

Nさま邸の特徴

札幌市北区あいの里にお住いのNさまは、大好きなガーデンイングを楽しむために、敷地を最大限に生かし、住まいをコンパクトに仕上げました。キーワードは未完成の家。DIYで暮らしながら自分たち好みに造り込んでいくスタイルですが、ローコスト化も実現できました。完成から6年を経た住まいの様子をご紹介します。

設計/あとりえコア(旭川) 撮影/宮田千香子

今東京あたりでは10坪、15坪なんて狭小住宅が珍しくない昨今。
住宅環境に恵まれているはずの札幌にも、探してみると、いるんです。小さな家に生活のヨロコビをいっぱいに満たして、大らかに暮らしている素敵なご家族が…。
その家を訪ねて、その暮らしぶりを覗いてみました。

写真:木の素材感と、シンプルなデザインの外観。アプローチから枕木の階段を上るとウッドデッキに。外観デザインと合わせて造られたこの空間は、ご主人の力作です。

自然と土のある生活。それが、こだわりの原点です

写真:通行者の視線を遮るようにしつらえたウッドデッキは、家族で焼肉を楽しむなど、第2のLDとして大活躍です。

ノビノビと枝を広げる街路樹や木陰から涼しい風が吹きぬける緑道、四季の彩りに満ちた公園。札幌市北区あいの里は、そんな緑の風景が、そこここに散りばめられた住宅街です。その一角に、木肌を生かした外観とかわいらしい三角屋根が目をひく、Nさんの家が建っています。サクランボやアジサイ、バラなどの木々に囲まれた84坪の扇形の敷地には、手入れの行き届いた家庭菜園も造られていました。

「長年住んでいた戸建ての公宅が、マンション化されることになったのが、家づくりのきっかけなんです。公宅時代から土と緑は、私たちの生活の一部でしたので、家族の歴史を刻んだ庭木と一緒に、この場所に土地をみつけ、移り住んだんです。あいの里は環境が良く、区画がゆったりとしているので、ここなら、大好きな庭いじりが存分に楽しめると思って…」。穏やかな笑みを浮かべながら、庭先で出迎えてくれた奥さまは家づくりのきっかけを話してくれました。

暮らしを楽しむことが、最優先!無理をせずに建てたら、この大きさに

早速、奥さまの案内で家の中を拝見することに。玄関ドアを開けて、ビックリ!なんと、一歩足を踏み入れたそこはもう、リビング・ダイニングなのでありました。
「実は、初めからこの広さにこだわったワケではないんです。庭を広くとって野菜づくりをしたいという希望はありましたけれど、自分達が無理をしない範囲で、建てられた家の大きさがこのサイズだっただけ。本音を言えば、もっと広さがあったら…と思うことは、今でもありますよ」。奥さまは、笑いながら小さな家誕生の秘密を明かしてくれました。
しかし、背伸びをしない家づくりのおかげで、登山やスキー、旅行などたくさんの家族の思い出もつくることができたといいます。

建ててからが、本当の仕事。それが目指した家づくりです

写真:屋根裏まで吹き抜けにしたリビング・ダイニング。こぢんまりとした空間ですが、この吹き抜けのお陰で広々とした印象に。2階にいる家族にも声が届きます。

家づくりの計画にあたって、ご主人は、「普通の家は好きじゃない。後々、自分で手を加えられる自由度の高い家が欲しい」と、強く主張。ぢYが大好きなご主人にとって、わが家は自慢の腕を振るう大切なステージでもあったのです。
そこで、Nさんは設計士の友人に相談。そして、後で自分で手を加えることを前提に、できる限りローコスト化を図りつつ、注文住宅を建てました。「贅沢かなぁとも思いましたが、既製の住宅ではできないことも、なにかと融通をきかせて実現してもらえたので、結局はお得だったかもしれませんね。主人は、大工さんにDIYのノウハウを教えてもらったのが、良かったって言っています」。

家族の気配がどこにいても伝わります。わが家の辞書に“引きこもり”という言葉はありません

写真:娘さんの部屋。わずか3畳のスペースですが、天窓があり、壁の一部がオープンになっているため、不思議と圧迫感がありません。

Nさんの家には、ご夫妻と19歳の娘さん、17歳の息子さん、2歳の愛犬が住んでいます。1階に和室とLDK、サニタリー。2階には、2つの子供部屋、主寝室、収納コーナーが設けられています。
吹き抜けが効果的に設けられた室内は、主寝室以外はすべて、オープンな造り。ご主人が壁で仕切った約3畳!の子供部屋にも、扉がありません。「いつでも、どこにいてもお互いの気配を感じられますから、内緒話がね、できない家なんです(笑)」。
小さな家は、空間全体がみんなのもの。そんな意識から、既存の用途にこだわらず、それぞれ場面に応じて空間を使い分ける、暮らしの知恵も生まれました。

キーワードは、未完の家。これからも、暮らしの変化に合わせて、この家を変えていきます

「主人は休日でも、まずじっとしていることがありません。庭や大工仕事だけじゃなく、梅干しまで作っちゃうんですよ」と、奥さま。完成から6年の歳月を経た家の内外には、その力作が随所に散りばめられています。
「子供が独立するまで、あと6年ほど。今は、この家でその短い時間を最大限に楽しみたいですね。将来、家族構成が変わったら、その時はまた新しい暮らしを楽しくできるよう、家も変えていきたいと思っています。そうなんです、ここは、いつまでも完成することがない“未完の家”なんです」。Nさんは、これからも自らの手を動かして、暮らしによりフィットした心地よい家を造りあげていくことでしょう。小さな家を訪ねてみたら、心豊かな家族の時間がそこにたっぷりと詰まっていました。

DATA: Nさん宅

夫婦+子供2人
1階床面積:38.88m2
2階床面積:32.40m2
延床面積:71.28m2